なぜ、幼児期の教育が重要なのか。非認知能力が将来の年収や生活に影響することを示した「ペリー就学前計画」

ペリー就学前計画幼児期の教育の重要性 知育

幼児期の教育が将来に影響するということを明らかにした研究に、「ペリー就学前計画(就学前プロジェクト)」があります。

しかも現在まで50年以上の長きに渡って追跡調査が行われている研究です。

この調査によると、子どもの頃における「非認知能力の高さ」が、将来の年収や経済力に影響すると報告されています。

そこで今回は、ペリー就学前計画に関する詳細な内容と、非認知能力との関係性について紹介します。

 ペリー就学前計画とは?

ペリー就学前計画とは、早期教育の効果について、アメリカのペリー幼稚園で行われた研究のことです。

ミシガン州政府が1962年から1967年にかけて、ペリー幼稚園で低所得のアフリカ系アフリカ人の子どもを対象に、質の高い幼児教育を行いました。

ペリー幼稚園で行われた「質の高い教育」とは?

実際にペリー幼稚園では行われていた「質の高い教育」とは、次のような内容です。

  • 3~4歳の子どもが2年間通って、読み書きなどの認知能力を高める
  • 子どもの主体的な活動をさせる
  • 生活指導やしつけを行い、6人の子どもに対して1人の高学歴の先生が付く
  • 家庭訪問をして保護者とのコミュニケーションも図る(週1回1.5時間)
  • 親を対象とする少人数グループミーティング(毎月)

このように、特定の場所で子どもにだけ教育を施すだけでなく、親も一緒に関わる取り組みでした。

幼児期(5歳まで)の教育が将来にどのように影響を与えるのか

1960年代のアメリカは、貧困や人種差別問題など、社会の分裂が鮮明になった年代です。

十分な教育を受けられなかった子ども達は、将来非行に走ったり、犯罪を起こしたり、正規の仕事に就けないなど、その社会的地位は生涯低いものになり悪循環が続きました。

そこで、幼少期の教育が将来にどのように影響するのか研究が始まったのが、ペリー就学前研究です。

ヘックマン教授の研究から明らかになったこととは?

このペリー就学前計画の研究をもとに、その子どもたちの40年後や50年後の年収や職業について追跡調査を行った人物に、ジェームズ・J・ヘックマン教授がいます。

そのヘックマン教授によると、ペリー就学前計画で行われた「質の高い教育」を行った子どもたちは、40歳の大人になった時点において、経済的に安定していること、生活保護自給率が低いこと、逮捕率が低いことなどが分かったそうです。

その理由について、ヘックマン教授は「質の高い教育」を受けることで、幼児期のうちに「非認知能力」を身に付けたことが影響していると考えています。

非認知能力と認知能力の違い

そもそも「非認知能力」とはどのようなことを言うのでしょうか。

慶應義塾大学総合政策学部の中室牧子教授は、次のように述べています。

「非認知能力」とは、IQや学力テストでは測ることができない能力で、いわば「人格」のような人間の内面的なものである。

例えば、自分に対する自信、意欲、自制心などを総称して「非認知能力」と呼んでいる。

(引用:パソナ総合研究所「学力の経済学―教育に科学的根拠を」)

つまり、読み書きなどIQや学力テストで測ることのできる力が「認知能力」であり、自信や物事に対するやる気、自分をコントロールするといった力が「非認知能力」というわけです。

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幼少期に身に付けた「非認知能力」の影響は大人になっても続く

ヘックマン教授は、この非認知能力を幼児期に身に付けることで、将来の生活が比較的安定するようになることを研究で明らかにしています。

その後50歳代についても追跡調査は行われており、幼児期に受けた質の高い教育の費用対効果が高いことを示しているそうです。

非認知能力はどのように身に付けられるのか

先ほど触れた通り、非認知能力はIQのように学力テストで測れるものではありません。

そのため、どのようにして身に付けたと言えるのかといった指標がないようにも思えます。

ただ、非認知能力というから身構えてしまうであって、もっと細かく具体的に考えれば、そう難しいものでもないでしょう。

要は、自分に自信を持てることや、人を思いやれることなど、人間性を育てるということです。

そしてそれは、友達や家族など、周りの人間と関わることで身に付きます。

大人は子どもを信じ、子どもが成長できるようにサポートする

ペリー幼稚園では、先生が家庭訪問したり、親と面談をしたりすることで、家庭でも親が子どもの面倒をしっかり見るように促しました。

子どもにとって、家族や先生が自分を認めてくれることや、やりたいことに対して背中を押してくれるのは心強いものです。

具体的に褒め、たどり着くまでの過程を認める

子どもが大人に「ねえ!見て!」とアピールする時に、なんとなく「すごいね~」とだけ言ってしまうことがありますが、そこにもう一言加えてみましょう。

「髪の毛がそっくりに書けたね」など、子どもが工夫したことや頑張ったことを具体的に褒めることで、子どもにいいフィードバックをすることができます。

また、目標までたどり着けなかったとしても「~ができなかったから今度は頑張ろうね」といった原点法ではなく、「大変だったのに、ここまでよくやったね」とできたことを認めてあげてください

同世代の友達とたくさん遊ばせる

家族とだけでなく、公園や保育園、幼稚園などで同世代の友達とたくさん遊ぶことは、子どもの心を発達させるのに大切なステップです。

子どもは遊びを通して「やりたいことややりたいことをやるにはどうしたらいいのか」「友だちと楽しく遊ぶには、うまく行かなかったときはどうしたらいいのか」といったことについてヒントを得ます。

そこには、大人との関わりだけでは得られないものがたくさんあるはずです。

幼児期の教育は重要!その後の人生に大きく関係してくる

本記事の内容をまとめると、次の通りです。

  • ペリー就学前計画とは、1960年代のアメリカで行われた幼児期の子どもにアプローチする取り組み
  • ペリー幼稚園で質の高い教育を受けた貧困層の子どもたちは、その教育を受けていない子どもに比べて、40歳時点で経済的に安定し、逮捕率が低いといった傾向が見られた
  • 幼児期に身に付けた認知能力の差はすぐに消失するが、非認知能力の影響は大人になっても続く

このように、ペリー就学前計画の追跡調査からは、幼児期における「質の高い教育」により非認知能力を身に付けることが、その後の人生に大きな影響を与えることが報告されています。

実際、非認知能力(EQ)を身に付けられることを謳った幼児教室・教材などが最近は増えてきました。

ヘックマン教授の研究はあくまでも一つの指標に過ぎませんが、幼児期における教育の重要性がよく分かるデータであることには間違いありません

目先の勉強や学力ではなく、子どもの将来を見据えた幼児教育を考えていきたいですね。

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