発達の最近接領域とは?理論を提唱したヴィゴツキーと心理学者ピアジェの考え方の違い

メソッド・教育法

子どもが何かやろうとしている時、どこまで大人が手伝ってやるのかは悩ましいもの。

そんな「子どもが一人でできること」と「援助があれば成し遂げられる」境界を「最近接領域」と名付け、幼児教育の研究をしていた「ヴィゴツキー」という人がいました。

今回は、ヴィゴツキーの来歴や、子どもの発達に対する研究やピアジェとの考え方の違いについて、紹介していきます。

ヴィゴツキーってどんな人?

ヴィゴツキー(1896-1934)は、ロシア( 旧ソビエト)で生まれた 心理学と教育学を研究した人です 。37歳という若さで 結核のためこの世を去りました 。

ヴィゴツキーの研究期間はたった10年間ですが、「心理学におけるモーツァルト」と呼ばれるほど、その間に多くの研究を行い、心理学において多大なる功績を残しています。

実際、大学では心理学だけではなく法学や歴史、哲学科を同時に卒業したり、文学や美術に長けているなど、非常に才能のある人物でした。

発達の最近接領域とは?

ヴィゴツキーの行った研究に、子どもの発達と教育の関係を理論化を行ったものがあります。

その有名な理論の一つである「最近接領域」について見ていきましょう。

「発達の最近接領域」って何?

「最近接領域」とは、子どもが一人でできる限界と、援助があれば成し遂げられる境界のことを指します。

ヴィゴツキーがこの理論を提唱したのは、次のような気付きがあったからです。

それは、子どもは大人との関わりの中で、常に自分一人でするよりも多くのことができるということ。

つまり、ヴィゴツキーは、できないことができるようになるまで自然に発達を待つのではなく、少しヒントやアドバイスをあげることで、できるようになると考えました。そこでヴィゴツキーは次のような実験を行います。

発達水準テストの結果、7歳程度の理解力をもつと分かった子どもに対し、ヒントを用いながら問題を解かせたところ、最終的には9歳までの問題を解くことができるようになったそうです。

この実験結果から、ヴィゴツキーはこのように周囲の援助によって可能になった知的水準の差異を「最近接領域」と名付けました。

そして、いかに子どもの教育にとって模倣や少しのヒントが重要かということを説いています。

大人や周囲の者が子どもを助けることが重要であるとした

ヴィゴツキーは、子どもの発達には周りの人間による「援助」が欠かせないと考えました。

例えば、小さな子どもにペットボトルの蓋を開けるように言っても、初めてペットボトルを手にした子どもは力の入れ方や開け方が分かりません。

この段階で子どもは「できない」のです。

しかし、親がペットボトルの蓋を開けるのを見せれば、子どもはそのやり方を模倣してやってみようとしますよね。

このように、周りの大人ができないと思っていたことでも、子どものために大人や周囲の人間が助け合ることで、子どもは学び、次第に自分のものにしていきます。

子どもの発達に対するピアジェとの考え方の違いは?

ヴィゴツキーと同じ年に生まれ、現代まで大きな影響を残した心理学者にピアジェ(1896-1980)がいます。

有名な「4つの発達段階」の提唱者として、名前を聞いたことがある人も多いでしょう。

同時代を生きたピアジェとヴィゴツキーは共に子どもの発達に関する研究を行っていましたが、その考え方には違いがありました。

ピアジェ ヴィゴツキー
発達因子 子ども同士 大人や周囲の年長者
知識の発達 自分自身 大人の援助により
一人で取り組める

まず、ピアジェは子どもの言語や思考などは、自然と発達していくものだと考えていました。

「自然」というのは、子どもが一人で勝手に発達するというわけではなく、子ども同士の関わりを通して、自分自身を発達させていくという意味です。

一方、ヴィゴツキーは先ほど見た通り、子ども同士の関わりよりも大人の関わりを重視しています。

大人や年長者、知識者との関わりが正しい知識の形成を助け、ヒントや援助を得ることで子どもは課題に対し一人で取り組めるようになることを主張しました。

「発達の最近接領域」は知らないうちに生活の一部になっている

近年は義務教育や高等教育でも盛んにグループ活動が取り入れられ、協同学習にスポットがあたることが多いです。

これはどちらかというと、子ども同士の関わりを手掛かりに自分の知識を深めるピアジェの理論に近いところがあります。

ただ、まだ子どもが幼いうちは、気付かないうちに「発達の最近接領域」の理論で子どもの成長を後押しする形のほうが多いかもしれません。

良いことも悪いことでも子どもは身近にいる大人の模倣をする

何も教えた覚えがないのに、子どもがいつの間にかできるようになっていたことってありますよね。

一方で、運転中にイライラしながら呟いていた言葉や叱りつけた時の言葉を覚えて、乱暴な言葉を使うようになることも…。

子どもは身近にいる大人から驚くほど吸収し、模倣して自分のものにしていきます

保育園や幼稚園に行き出すと同世代の子どもから刺激を受けていきますが、大人と過ごす時間の多い子どもは、とにかく周りの大人から得られる情報で自分をつくっていくわけです。

子どもと過ごす時間は、できるだけ子どものプラスになるように接してあげたいですね。

子どものレベルよりも高い内容のドリルはヒントの多いものを選ぶ

子どもが自分の能力を超えている内容に出会った時、大人のヒントを得ながら問題を解くといっても、大人に聞いてばかりでは最終的に一人で解けるようにはなりません。

大人からしても、毎度ヒントを聞かれるようではだんだん面倒くさくなってしまうもの。

子どもの思考を働かせるようなものではなく、答えに直結するようなことばかり言ってしまいますよね。

そんな時は、普通よりも少し多めにヒントが書いてあるようなドリルや問題集を選ぶようにしましょう。

少々内容が難しくても、次第に大人に甘えることなく自分で解けるようになるはずです。

必要に応じて適切に大人が手を貸すことで可能性は広げられる

ヴィゴツキーの人物像と、「発達の最近接領域」について紹介してきました。

ヒントや助けを与えることを極力避け、子ども自身に考えさせようとする教育法もあります。

確かにそれも考え方の一つですが、何ら助けや関わりのない中で正しい知識や価値観を身に付けていくのは難しいでしょう。

子どもが自分で何とかすることばかりを求めるのは「放置」であって、子どものための教育ではないからです。

ヴィゴツキーのように、必要に応じて大人が手を貸すことで、子どもは自分の可能性を広げることができるのかもしれませんね。

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